誉傷

 日曜日に刀の工作についての相談で刀匠の早坂さんを訪問。
 昨年武用にと購入した現代刀があるのですがその刀のバランスがどうも悪いので
す。
 二尺四寸四分の「肥前国吉光」の刀です、この刀、姿形はなかなか良いのですが
持ってみると先重で非常に重く感じるのです。
 しかし重量は刀身が770g、抜き身で990gと居合い刀として考えた場合そんな極端
に重いわけではないのですが。
 “樋を入れなおして刀身重量をもう少し落とすことができないか相談するしかない”
 という訳で早坂さんを訪問、挨拶もそこそこに刀を見ていただきました。
 刀を詳細に見ていただきその結果は
 「樋をいれて重量を落とすだけではダメ。先のほうを少し減らし、バランスを整える
ようにしないと振りにくいのでは、この刀、武用ではなく美術鑑賞用として作ったので
はないか。刀身を全体的に直すようになります。」
 ということでこの刀をいじるとしたらかなり大掛かりとなり工作料も当初考えていた
額よりも大幅にUP、これはちょっと予想外の展開だぞ。
 結局、工作するかどうかはちょっと考えさせていただくというこで返事をしてきたの
です。
 
 今回、この吉光の刀の他に以前ブログで紹介したことがあるニ尺三寸九分の無銘
の古刀も持参して見ていただきました。
まあこれは単に見ていただいただけというか、居合いで実際に使用するにはどうか
のご相談だったのですが。
 しかし吉光を見た時とこの古刀を見た時の早坂さんの目の輝きがぜんぜん違って
いました。
 「スッキリとした良い刀ですね、これで居合いをしたら気持ちがイイですよ。でも間
違って刃先をぶつけて刃こぼれでもしたら大変だからな、やはりもったいないかなぁ
~。
 現在は細直刃ですがもともとは中直刃ぐらいあったのでは、実戦で使用し研ぎ減っ
てこのくらいになったのでは。
 この刀、そうとう大切にされていたんですよ。拵えも良いし、殿中差しとして使われ
いたのかもしれませんね。
 峰に打ち込み傷が四ヶ所もありますよ、歴戦の勇士ですね。
 でも見れば見るほど良さがでてくる刀ですよ、鑑定にだしてみればいいんじゃない
ですか?」
 峰に打ち込み傷が四ヶ所、峰の傷というか線みたいな傷は所謂誉れ傷って
やつですか、ビックリ。
 バリバリの実戦経験者じゃないですか。
 実は以前、骨董屋さんから古刀ということでニ尺二寸の錆刀を購入したことがある
のです、それを研ぎにだしたところ研ぎ師さんから研ぎの途中経過等細かく連絡を
いただいたのですが刀としては古刀ではなく新々刀でそれほど良い刀ではない、切
っ先から物打ちにかけて刃こぼれが有り刀身自体もゆがみがありなにかを叩き切っ
たような感じ、研ぎ自体も実践的な研ぎがほどこされている。ということでした。
 これって戊辰戦争あたりで実際に使用されたということですよね!!
 それで研ぎあがって戻ってきた刀を見ると、気のせいかなんとなく刀身がギラっとした感じで見ていてあまり気持ちがよくないのです、結局せっかく錆身を研ぎ上げた
刀ではあったのですが、どうしても気にくわず、すぐに手放してしまいました。
 この古刀も実戦をくぐり抜けてきた刀の筈なのですが、ぜんぜんいやな感じがし
ないのです、逆に見ていて味わいがあるのです。
 なんなのでしょうね、この違いは?
 所謂妖刀伝説の類になってしまいますかね。