手をすり抜けていった物。

 地元で懇意にしていただいている古美術店があるのですが、店主の方が健康を悪
くされたり、今回の震災の影響もありでずーっと休業しているようです。
 この前の日曜日は、仙台の大観音で骨董市が開かれ私も久しぶりにいってみた
のですが、震災の影響で出店店数も少なく、来場者も少ないようでした。
 会場で知っている方と出会い、この古美術店の話が偶然でたのですが。
 このお店、刀装具関係ではけっこう良い物を在庫しており、なかでも仙台金工の
草刈清定の物で超がつくような一級品があるのです。
 私も二度ほど見せていただきその出来にため息をついたものなのですが、当然
価格も一級、あまり詳しいことを書くと色々と差し障りがあるのでこのへんでストップ
しますが、骨董市でこの古美術店の話がでた時なんとなくその商品が気になってし
まい思いきって電話をしてみました。
 「どうもご無沙汰です。ちょっとお聞きしたいのですが、草刈清定のあの刀装具ま
だお持ちですか。」
 「えっ、あれ売っちゃったよ。欲しかった。」
 (けっこうショック、欲しいといえば欲しいのですが値段が折り合うはずが無い
と思い、前に声をかけていただいた時は値段も聞かずにお断りしていたのです。)
 「ちなみにいくらでお売りになったかなんて教えてもらえます。」
 「〇〇万円、やっぱり欲しかったんだ。この値段だったらがんばれば用意できた?
ごめんね。」
 まさかの価格に超ショック、たしかに高額は高額ですがなんとかつくれない額では
なかったのです。
 ほとんど処分価格。
 あ~!あの名品が、私の手をすり抜けていった。
 前に声をかけていただいた時、なんで価格を聞かなかったのか悔やむことしきり
です。
 
 でも、これだけの震災があった後で高額な刀装具でもなかろう、これで良かったの
ではと、自分自身に納得させているのですが、やっぱり悔しいです。
 一度は私の所に来るチャンスがあったのに、縁が無かったのですかね。残念。