現在、私のもっている小刀のなかでどれが一番良い物か？と問われた時、これで
すと言えるのが、この也太奇（やたぎ）の小刀です。
也太奇なんて鍛冶名はあまり聞いたことがないと思いますが、本名は遠藤智也さ
ん。あの二代宮野鉄之助の三男の方です。
この小刀を入手したのは昨年末のことですが、当初別な小刀を購入しようと伺った
お店で偶然これを手にし、所謂一目ぼれというやつで買ってしまいました。
小刀というのはあくまでも手道具の一つですし、同じ刃物のナイフのような華やか
さは無く言ってみれば鉄の塊みたいな刃物です。そんななかでも鍛冶によってそれ
ぞれに個性が在り、鉄の鍛えのおもしろさがでてくるものです。
その小刀のなかで也太奇の物は別格、道具というには非常に格調があるように感
じられます。
書家としても有名な方らしくあまりに達筆すぎて箱書きが読めません。
赤酒々（せきしゃしゃ）という銘がはいっており、禅語で素っ裸で隠す所がないとい
った意味らしいです。
おもしろいことに、三代鉄之助の銘が書かれています。（鉄之助の名を継ぐ時に
兄弟の間で色々とあったということをチラッと聞いたことがあります。）
